ロッドビルディング~きっかけ
私が投げ釣りにメインで使用している並継竿はD社製 ランドキャスター 30-405というもの。ヤフオクで数年前に格安で入手したものですが、まあさしていいところも悪いところもなく、値段相応の釣り味をもたらしてくれています。慣れなのでしょうが馴染んじゃってもう手放すことはないでしょう。
ただ気になっている点が複数あるのは事実。
- ガイドの固定に直線性が伴わず、どう継いでもまっすぐにならない。
- この手の竿はキス釣りがメインターゲットの為、ガイドセッティングが細糸仕様で小径すぎるため、極太仕掛け用力糸の抜けが悪い。
- 1番のスパインが横向きになっているらしく、曲げたときの反発力が斜めに入力される。
これらを改善するには、ガイドセットを大径化してラッピングしなおすしかない。春先釣行でルアーロッドが先折れしていることもあり、こちらの修繕と同時にロッドビルディングに挑戦してやろうじゃないのと一念発起しました。
準備
必要としたもの。
材料
- スレッド
マタギからメタリックスレッドなるド派手なものを通販入手。
- ガイド
予算の都合上、TOP以外はFuji製はあきらめ、トップから10-2.8、8L、8L、10L、12L、16L、20Lとなるよう不足分を格安メーカのステンレスSICガイドのものを通販入手。
- ウレタンコート
量販釣り具店で安いものを入手。二液性で調合用のスポイト付属
ツール
- ハンドラッパー(スレッディング用竿台)
木製で手作りしました。
- フィニッシングモータ(回転台)
ポイント利用で通販調達。在庫なしで取り寄せに2か月かかりました。待たせすぎw(送料おまけしてくれました。)
- 樹脂調合用ガラスボウル
- 樹脂塗布用刷毛
われらの味方、100均で調達。
作成プロセス
道具と素材の準備が完了したところで、作成開始と相成りました。Fujiガイドが発行しているロッドビルディングガイドに従い、作成プロセスを以下の通り計画しました。
- ガイドセッティングの確定と仮止め
- スレッドによる巻き付けガイド固定(1番竿)
- 樹脂コーティングと乾燥(1番竿、一回目)
- スレッドによる巻き付けガイド固定(2番竿)
- 樹脂コーティングと乾燥(2番竿、一回目)
- 樹脂コーティングと乾燥(1番竿、二回目)
- 樹脂コーティングと乾燥(2番竿、二回目)
ガイドセッティングの確定と仮止め
まずは平らな台の上でティップを押し付ける形で転がしながら、カーボンクロスの重ね目(スパイン)がどの位置かを確認します。スパインが下に向いたときに最も反発力が強くなります。
この位置が分かったらマークし、この位置に対してガイドをどう配置するかを決めていきます。
スパインとガイドの位置関係については、様々な考え方があるようですが、スピニング用について、かつてはスパインとは同位相でガイドを配置するのが主流だった(キャスト時にロッドを曲げこむ方向に対してスパインを腹にすることで反発力を大きく得る)ようですが、これをあえて逆にすることで素直な曲がりを与えてエネルギーロスになる振動を抑え、方向性を安定させることを優先する思想も採られることもあるらしいです。今回はキャストのコントロール性を重視して後者を採用しました。
また、この時点でガイドのフット部分の段差を棒やすりを使って滑らかに面取りします。フットの角度に歪みある場合もあるため、丸棒状の金属などを台にして叩くのも一つの手です。
ガイドセッティングの参考にした同モデルの33-405仕様を参考にガイド間隔を決定し、これに従いマスキングテープでガイドを仮止めします。
スパイン位置とガイドの直線性を確認しながら進めます。
この状態でロッドを継いでラインを通した状態で錘を下げて、ロッドの曲がりの状態とガイドを通したラインの距離の変動が不自然にならず、特定のガイドにラインの摩擦が大きくならないような状態を確認します。場合によってはこの状態でいったんグラステープで固定しなおし、試投することもあるようですが、私はそこまでしませんでした。競技参加する訳ではないですし。
微調整を行い、仮止めを完了させます。
スレッドによる巻き付けガイド固定
細かい手法はガイド本を参考に進めますが、勘所だけまとめます。
- スレッドにかけるテンションはスレッドの材質、太さによってまちまちなので、多色で飾り巻きを行う場合は少なくとも太さについては一定のものを選択した方がよい。
- メタリックスレッドはあまりテンションをかけすぎると編みがほどける為注意が必要。
- スレッドを巻くエリアのロッド表面は細めのサンドペーパで荒らしておくと滑らなくてよい。コーティングの足付けにも効果的。
- ロッド1本分をすべて巻き終えたらガイドの直線性を確認して微調整をおこなう。
ここは感覚の問題なので、うまくいかなければやり直し、数をこなしていけば勘が付いてきます。
樹脂コーティングと乾燥
まずは作業場所を準備します。樹脂が垂れ落ちる可能性があるため少し広めのスペースにビニールシートなどを敷いたうえにフィニッシングモータをセットします。
フィニッシングモータにロッドをセット。モータ側シャンクと対向する受け台とを同軸上になるよう調整し、試し運転してみます。負荷が掛かったり振動が発生しないよう再度位置を調整してから作業を開始します。
二液性樹脂の調合は基本1:1なので、シリンダを使って正確に計量します。調合量は少ないと後が大変なので多めが良いと言われていますが、調合用の乳鉢を二つ用意しておけば何とかなるので、あえて大量に作る必要はないでしょう。最大でも10cc+10cc = 仕上がり20ccくらいが適切です。私はさらにケチって5+5=10で行いました。どのみち二度盛りを考えていましたのでこのくらいが適切でした。1番で5点ガイドですから。
調合したら棒を使って攪拌します。この時気泡の混入を防ぎ、反応を促進するため加熱しますが、私の場合は作業場所の天井が低く、そこに白熱灯のダウンライトが設置されていて、これにあぶることで効果的に加熱できました。ドライヤのように風量があるものは使えないし、直火であぶるわけにもいかないのでお勧めです。ペット用のバスキングライトやデスクランプも使えると思います。
加熱することで粘度も下がり、塗布しやすくなると思います。スレッドへの浸透力を強める為、薄め液で希釈することも勧められていますが、コーティングの肉厚が薄くなることが考えられますので、塗布前にできるだけ加熱して粘度を下げ、浸透させながら冷まされることで粘度が高まり、これに上付けていくことで肉厚を稼ぐようにします。
回転させた状態で刷毛で加熱した樹脂を塗布し、均等に盛っていきます。スレッドの端の部分までしっかり盛り付け、いったんライターの火で再度加熱します。もしかすると粘度低下で樹脂がしたたり落ちるかもしれませんが気にせずに。ただしあぶりすぎるとすすけてしまうので注意が必要です。ここではあくまでスレッドに浸透する過程でできる気泡を除く為と割り切り、作業を行うことが大事です。
1本分できたら、回転させたまま一晩程度放置し、その後回転を停止してもう1日程度放置して乾燥させます。
2度目のコーティングの前には1000番程度のサンドペーパで1度目のコーディングの表面を荒らし、足付けを行います。
1回目同様の手順で、無希釈の樹脂により再度コーティングして肉厚を確保します。加熱による気泡の除去をしっかりしてください。
これを1日以上放置してしっかり乾燥させます。
これで完成。
半オリジナルロッドが完成です。
実釣の結果は、見事に問題点は解決されていました。
特に反発の出力の仕方が素直になって方向性が安定したこと、ガイドのサイズアップによる糸抜けの向上で、ちょっと飛距離もアップした気がします。
何より、既成のものとは一味違う、カスタムメイドのロッドは何とも言えない満足感を提供してくれます。
ぜひともみなさん、チャレンジください。